Jeder kann zum Mörder werden (Nahlah Saimeh, 2012)を読み終えた。肝要な部分は別にブックレビューを書く予定なのでとりあえず感想を述べると、Saimeh氏は文章が本当に上手だ。犯罪の現場と犯人の心理を、あたかも自分の目を通したように鮮明に書き出す。氏は制度の意義と限界を率直に論じる。感情の輪郭や、当人の感じた苦悩などが克明に描写されていて、診断の後冷静に結論を下す氏の姿が、法精神医学者として何百もの事例を見てきた者の覚悟をよく表している。
重度犯罪者を「理解不能」として切り捨てることは論理的に一貫しない。治療と人権の保障は甘さではなく、民主国家において人間の条件に対する誠実な応答である。そう静かに、厳粛に話す作者の姿がみえるようだった。